春過ぎて夏来るらし 白妙の衣干したり 天の香具山

父の祖先は真田流忍者、母の祖先は伊賀流藤林党忍者。そんな両親をもつ早紗のブログです。 


葡萄の贈り物 2


ぶどう




扉番の修道士は一房の葡萄を目の前に置き、
午前中ずっとそれを眺めて過ごした − それは本当に美しかった。


それゆえ、彼はその贈り物を修道院長に届けることにした。
修道院長はいつも、英知のことばで彼に刺激をあたえてくれていたからだ。


修道院長は葡萄を大いに喜んだが、
修道院には病気の修道士がひとりいることを思い出し、こう考えた−

 −『この葡萄を彼にあげよう。もしかしたら、彼の人生に喜びをもたらすかもしれないから』


しかし、葡萄が病気の修道士の部屋にとどまった時間は長くなかった。
彼はこう考えたからだ−

 −『料理番の修道士は私を心配して、一番いい食べ物で栄養をつけてくれた。
                      これは彼に大いに幸せをもたらすにちがいない。』


料理番の修道士が昼食の時間にあらわれると、彼は葡萄を差し出した。
 −『これはあなたのものです。自然があたえてくれる産物にいつも触れているあなたなら、
                           この神の御業をどうしたらいいかご存じでしょう』


料理番の修道士は葡萄の房の美しさに息を飲み、
助手にも葡萄の完璧さを見せた。
それはいかにも非の打ち所がなく、
聖具番の修道士以外にその真価がわかる人はいそうになかった。
彼は大切な聖体の保管をまかされ、修道院じゅうから聖人と見なされているのだった。


                              
                                               − つづく −


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